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ビジネスモデル特許について

ビジネスモデル特許とは?

ビジネス方法に係る発明(ビジネス関連発明)に与えられる特許をいいます。特許庁は「ビジネス関連発明とはビジネス方法がICT (Information and Communication Technology:情報通信技術)を利用して実現された発明」と言っています。このことから、具体的には、ビジネスモデル特許とは、コンピュータソフトウェアを使用したビジネス方法に係る発明に与えられる特許を言います。
したがって、ビジネス方法自体は特許になりません。
当所に相談に訪れる多くの方が誤解している点です。ビジネス方法自体は、「人為的取決め」に相当し、「自然法則を利用していない」ので、特許法上の発明に該当しないのです。例えば、下図に示した「販売管理」や「ポイントサービス」の仕組みだけでは発明(ビジネス関連発明)には該当しません。ICTの技術を用いることにより、「販売サービス支援システム」として発明(ビジネス関連発明)に該当します。


(特許庁「ビジネス関連発明の最近の動向について」より)

例えば、以下の「ポイントサービス方法」の請求項1に係る発明は、発明に該当しない例として特許庁から示されています。
【請求項1】
テレホンショッピングで商品を購入した金額に応じてポイントを与えるサービス方法において、
贈与するポイントの量と贈答先の名前が電話を介して通知されるステップ、
贈答先の名前に基づいて顧客リスト記憶手段に記憶された贈答先の電話番号を取得するステップ、
前記ポイントの量を、顧客リスト記憶手段に記憶された贈答先のポイントに加算するステップ、及び
サービスポイントが贈与されたことを贈答先の電話番号を用いて電話にて贈答先に通知するステップとからなるサービス方法。

特許庁は、説明として『「電話」、「顧客リスト記憶手段」という手段を使用するものであるが、この発明は全体としてみればこれら手段を道具として用いる人為的取決めそのものであって、「自然法則を利用していないもの」に該当する。したがって、【請求項1】に係る発明は、「発明」には該当しない。』と言っています。

一方、請求項2に係る発明は、発明に該当する例として特許庁から示されています。
【請求項2】
インターネット上の店で商品を購入した金額に応じてポイントを与えるサービス方法において、
贈与するポイントの量と贈答先の名前がインターネットを介してサーバーに入力されるステップ、
サーバーが、贈答先の名前に基づいて顧客リスト記憶手段に記憶された贈答先の電子メールアドレスを取得するステップ、
サーバーが、前記ポイントの量を、顧客リスト記憶手段に記憶された贈答先のポイントに加算するステップ、及び
サーバーが、サービスポイントが贈与されたことを贈答先の電子メールアドレスを用いて電子メールにて贈答先に通知するステップとからなるサービス方法。
(下線は筆者)

特許庁は、説明として『サーバーが「顧客リスト記憶手段」を検索して贈答先の電子メールアドレスを取得すると共に、「顧客リスト記憶手段」に記憶されている贈答先のポイントに加算し、取得した贈答先の電子メールアドレスに対して通知を行うという処理を、ハードウエア資源であるコンピュータを用いて具体的に実現した情報処理システムの動作方法であるから、この発明は「ソフトウエアによる情報処理がハードウエア資源を用いて具体的に実現されたもの」であるといえる。したがって、【請求項2】に係る発明は「発明」に該当する。』と言っています。
このようにビジネスモデル特許の記載に関しては、コンピュータをどのように用いて発明を実現したのかを明確に記載する必要があります。


(特許・実用新案審査基準「コンピュータ・ソフトウェア関連発明」より)

勿論、発明(ビジネス関連発明)に該当しても、他の特許要件(新規性、進歩性)を満たさないと、特許にはなりません。
例えば、上記の「ポイントサービス方法」の請求項2に係る発明は、進歩性がない例として示されています。仮想事例なので、前提としては、以下の引用発明がこの出願前に公知であったという条件の下での話です。
(引用発明)
店で商品を購入した金額に応じてポイントを与えるサービス方法において、
贈与するポイントの量と贈与先の名前を指定されたことに応じて、
贈与先の名前に基づいて顧客リストに記載された贈与先の住所を取得するステップ、
前記ポイントの量を、顧客リスト記載された贈与先のポイントに加算するステップ、
及び
サービスポイントが贈与されたことを通知するはがきを贈与先の住所に郵送するステップ、
とからなるサービス方法。

特許庁は、説明として『引用発明に係る人間の行っている業務を、コンピュータ技術の技術水準を用いて通常のシステム開発手法によりシステム化したに過ぎないから当業者が容易に発明できたものである。』と言い、進歩性を否定しています。
この事例からはわかることは、商取引を単にシステム化してもビジネスモデル特許は取ることはできませんということです。

ビジネスモデル特許出願の書類を作成する上で大切なこと

ビジネスモデル特許出願の書類を作成する上では、以下のような観点で発明を検討する必要があります。
一つ目は、ビジネス方法は新規なものか、既存のものか?
二つ目は、ビジネス方法を実現するのに用いたICT技術は新規なものか、既存の技術か?
ということです。
下図は、特許庁がビジネス関連発明の「進歩性」の判断について示した表です。

この表によれば、ビジネス方法が公知(既存)で、かつITによる具体化方法も公知(既存)である場合には、当たり前ですが、進歩性は認められないと判断されています。したがって、少なくとも、ビジネス方法又はICT技術の少なくともいずれか一方は公知でない(新規である)必要があります。勿論、ビジネス方法又はICT技術の少なくともいずれか一方は公知でなくても、進歩性の可能性があるというだけです。
そこで、三つ目として、本発明に係るビジネス方法と従来のビジネス方法との違いは何か?新たな機能や効果は何か?という点が重要になってきます。この点を十分に深堀りして、本発明の特徴を際立たせ、進歩性の要件をクリアーする必要があります。
ビジネスモデル特許を説明する上で、図面としては、(1)ハードウェア構成を示すシステム構成図、(2)業務プロセスや処理の流れを示すフローチャートやシーケンス、(3)データベースやデータのフォーマットなどデータ構成、(4)画面例などが必要となるので、これらに関する資料があれば、発明の特徴を探る上で役に立ちます。

一方、進歩性をクリアーし、ビジネスモデル特許として成立したとしても、実際のビジネスに役に立たなければ意味がありません。一般にICTを駆使したビジネスモデル特許は、インターネットなどの通信網、それに接続されるサーバ装置やユーザ端末など複数の装置が参加して構成されています。このように複数のプレーヤーが参加する中で、サービス主体と成り得る部分を権利化する必要があります。

例えば、上記の「ポイントサービス方法」に係る発明に対応させた、以下のようなシステム全体に係る発明があったとします。
【請求項3】
インターネットを介して顧客端末とサーバーが接続可能に構成され、インターネット上の店で商品を購入した金額に応じてポイントを与えるポイントサービスシステムであって、
贈答元の顧客端末が、
贈与するポイントの量と贈答先の名前をインターネットを介してサーバーに送信する手段(以下、A手段)を備え、
サーバーが、
贈答先の名前に基づいて顧客リスト記憶手段に記憶された贈答先の電子メールアドレスを取得する手段(以下、B手段)と、
前記ポイントの量を、顧客リスト記憶手段に記憶された贈答先のポイントに加算する手段(以下、C手段)と、
サービスポイントが贈与されたことを贈答先の電子メールアドレスを用いて電子メールにて贈答先の顧客端末に送信する手段(以下、D手段)と、とからなるポイントサービスシステム。

請求項3に係る発明は、サーバーと顧客端末からなるシステム全体の発明であり、顧客端末も構成要素となっています。そのため、出願人がサーバー事業者である場合、同一のポイントサービスを模倣して実行する他の事業者に対して直接侵害による権利行使ができない特許となってしまいます。特許法には権利一体の原則というのがあり、特許侵害になるには、特許発明のすべての要件、つまり、顧客端末のA手段、サーバーのB手段、C手段及びD手段のすべてを備える必要があります。しかしながら、A手段は、顧客が実行する手段であるから、通常、サーバ事業者である相手方は備えていません。

したがって、この場合、サーバー事業者としては、以下のようなサーバーに係る発明がビジネス上必要なのです。
【請求項4】
インターネットを介して顧客端末と接続可能であり、インターネット上の店で商品を購入した金額に応じてポイントを与えるポイントサービスサーバーであって、
贈答元の顧客端末から、贈与するポイントの量と贈答先の名前をインターネットを介して受信する手段と、
贈答先の名前に基づいて顧客リスト記憶手段に記憶された贈答先の電子メールアドレスを取得する手段と、
前記ポイントの量を、顧客リスト記憶手段に記憶された贈答先のポイントに加算する手段と、
サービスポイントが贈与されたことを贈答先の電子メールアドレスを用いて電子メールにて贈答先の顧客端末に送信する手段と、とからなるポイントサービスサーバー。

このように特許請求の範囲の書き方によって、カバーされる権利範囲は大きく変わります。したがって、ビジネスモデル特許では、出願人が提供するサービスがどのプレーヤーの立場にいるかを考え、権利化の対象を見極めることが重要です。

最近のビジネスモデル特許の傾向


(特許庁「ビジネス関連発明の最近の動向について」より)

特許庁の公表資料によれば、特許査定率は、2000年になされた出願では10%を切っていましたが、徐々に上昇し、2012年になされた出願では約69%(全分野の平均では約74%)になっています。ビジネスモデル特許は申請しても特許になりにくいという印象がありますが、昨今はそんなことはありません。勿論、前提として、コンピュータソフトウェア関連発明としての特許要件(発明の成立、新規性、進歩性)を満たす必要はありますが…。
当所弁理士は、長い間このようなビジネスモデル特許の案件を取り扱ってきました。特許出願書類(明細書)の作成や審査官との対応も熟知していますので、インターネット等を用いた新規なビジネス方法のアイデアをお持ちの方は一度相談に訪れてください。最適なアドバイスをさせていただきます。

<追記>
先日、日経(2018年9月26日朝刊)に上記「最近のビジネスモデル特許の傾向」を裏付ける記事がありました。以下、引用です。

ビジネスモデル特許、再脚光
出願件数回復、5年で1.5倍に

IT(情報技術)を使った事業の仕組みを特許にする「ビジネスモデル特許」の国内の出願件数が急回復している。2017年に公開された件数は5年前の1.5倍になった。人工知能(AI)などの技術発展でITと金融を融合したフィンテックなど新サービスが台頭しているためだ。出願が乱発された2000年代初めのネットバブル時に比べて、実際に特許として認められる比率も上昇し、特許活用術の重みが増している。
(中略)
「AIやあらゆるモノがネットにつながるIoTの普及が背景」(特許庁)。大量のデータを処理できる技術が新たなビジネスモデルの開発を可能にしている。

上記記事では「市場創出の武器」という見出しも出されており、ビジネスモデル特許が強い武器となることが記載されています。
また、最近登録されたビジネスモデル特許の例として、メルカルが挙げられており、新興企業のビジネスモデル特許出願が増加した原因も記載されています。

以下、日経の同日記事の引用です。


フリーマーケットアプリ大手のメルカリは18年4月に同社初のビジネスモデル特許を取得。ユーザーが売りたい商品の画像を多く載せるほど、AIのはじき出す商品の査定額が高くなる仕組みだ。情報発信を増やせば買い手の安心感も増す。
7月には特許出願戦略を担う専門組織「IPリーガルグループ」を設置した。上村篤マネージャーは「自社ビジネスを守る質の高い特許を取っていく」と意気込む。

こうした新興企業のビジネスモデル特許出願ラッシュを後押ししたとされるのが16年に東京地裁に起こされた訴訟だ。
クラウド会計ソフトのfreee(フリー)が資金の出入りを自動仕訳する特許を侵害されたとしてライバルのマネーフォワードを提訴。翌年フリーの敗訴が確定したが、事業の中核技術が争われ、「ビジネスモデル特許の重要性が再認識される契機になった」(鮫島正洋弁護士)という。

今後、ますます、ビジネスモデル特許の重要性は増していくものと思われます。

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