AI特許について
AI関連発明というと、AIのアルゴリズムに関する発明を思い浮かべる方が多いかもしれません。例えば、マイクロソフトやグーグルなどの大手IT会社が開発した高度なディープラーニング技術に関する発明などです。しかしながら、これとは別に、AIを活用した発明というものもあります。完成したAIのアルゴリズムを特定の技術分野に適用した発明です。
先日、日経(2018年5月21日朝刊)にAIを活用しているパン屋さんの記事がありました。以下、引用です。
AIと接客、良縁築く
レジや電話対応 身近な職場、生産性向上
東京都世田谷区にあるパン屋「ボヌール三軒茶屋本店」ではレジでAIが活躍している。
「合計で450円です」。来店客がパンを載せたトレーを台に置くと、画面にパンの画像と商品名、金額がぱっと表示される。「待ち時間の短縮につながった」。気仙祐輔取締役は満足そうだ。
計算間違えず
パンは形が違ったり焦げ目がついていたりと細かい違いがあるが、AIの機械学習で精度が向上した。「人より計算間違いを減らせる」(気仙氏)。店員はレジ打ちをせず、商品を袋に詰めながら接客に専念できる。
システムを開発したのはブレイン(兵庫県西脇市)で、ボヌール三軒茶屋本店だけでなく2017年には100台以上を販売したという。神戸寿社長は「引き合いが多く、納入を待ってもらっている状態」と話す。
興味深い記事だったので、J-PlatPatで、この特許を検索してみました。すると、出願人ブレインでパン識別に関する特許出願がいくつか見つかりました。そのうちの一つを以下に示します。
特開2011-170745(特許第5510924号)
特許権者 株式会社ブレイン
特許された請求項は以下の通りです。
【請求項1】
カメラからのパンのカラー画像を画像認識することにより、パンの種類を識別する装置であって、
パンのカラー画像から、パンの内側領域のカラー画像と、中間領域のカラー画像と、外側領域のカラー画像の3種類のカラー画像を切り出す切り出し部と、
パンのカラー画像から、パンの輪郭に関する特徴量を求めるための輪郭データ抽出部と、
パンのカラー画像から、パンのテクスチャーに関する特徴量を、パンのカラーデータ中の輝度成分を用いて、求めるためのテクスチャーデータ抽出部と、
パンの内側領域のカラー画像のカラースペース内での特徴量を求めるための内側カラーデータ抽出部と、
パンの外側領域のカラー画像のカラースペース内での特徴量を求めるための外側カラーデータ抽出部と、
パンの中間領域のカラー画像のカラースペース内での特徴量を求めるための中間カラーデータ抽出部と、
前記各抽出部で求めた特徴量によりパンの種類を識別する識別部、とを備えている、パンの識別装置。
【請求項2】
カメラからのパンのカラー画像を画像認識することにより、パンの種類を識別するために、
コンピュータを、
パンのカラー画像から、パンの内側領域のカラー画像と、中間領域のカラー画像と、外側領域のカラー画像の3種類のカラー画像を切り出す切り出し部と、
パンのカラー画像から、パンの輪郭に関する特徴量を求めるための輪郭データ抽出部と、
パンのカラー画像から、パンのテクスチャーに関する特徴量を、パンのカラーデータ中の輝度成分を用いて、求めるためのテクスチャーデータ抽出部と、
パンの内側領域のカラー画像のカラースペース内での特徴量を求めるための内側カラーデータ抽出部と、
パンの外側領域のカラー画像のカラースペース内での特徴量を求めるための外側カラーデータ抽出部と、
パンの中間領域のカラー画像のカラースペース内での特徴量を求めるための中間カラーデータ抽出部と、
前記各抽出部で求めた特徴量によりパンの種類を識別する識別部、として機能させるパンの識別プログラム。
このように今まで人が行っていた作業をAIが代わりに行って生産性向上を図る場面は今後頻出することでしょう。そしてこのような特許も数多く見受けられることになるでしょう。上記はパン屋の例ですが、AIを活用した発明は、あらゆる技術分野で発生する可能性があります。
AIを活用した特許は、ビジネスモデル特許の考えに近いものがあります。活用するAIアルゴリズムが公知であっても、適用する技術分野によって新規なサービスとなり、特許権取得となれば、競合他社を押されることが可能となります。
AIを活用した発明アイデアをお持ちの方、一度相談に訪れてください。最適なアドバイスをさせていただきます。