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LLM(大規模言語モデル)特許の書き方について

最近、ChatGPTなどの生成AIが話題になっています。今回は、大規模言語モデル(LLM)を用いる生成AI特許(以下、「LLM特許」)の請求項の記載について注意する点を述べたいと思います。
先日、特許庁が「AI関連技術に関する事例の追加について」(令和6年3月13日)を公開しましたので、追加されたLLM特許の事例をベースに説明します。

大規模言語モデルに入力するためのプロンプト用文章生成方法(事例38)


(特許庁「AI関連技術に関する事例の追加について」)

【請求項1】
入力された質問文に対して参考情報を付加することにより、大規模言語モデルに入力するためのプロンプトをコンピュータが生成するプロンプト用文章生成方法であって、
前記大規模言語モデルは入力できるプロンプトの文字数の上限である制限文字数が設定されており、質問文を含むプロンプトを入力すると、前記質問文に関する回答文を出力する大規模言語モデルであり、
前記コンピュータが、
前記入力された質問文をもとに、当該質問文の文字数と合わせた合計文字数が前記制限文字数以下の文字数となるように、前記質問文に関連した付加文章を生成する付加文章生成ステップと、
前記入力された質問文に対し、前記付加文章生成ステップにより生成された前記付加文章を前記参考情報として追加することによって前記プロンプトを生成するプロンプト生成ステップと、
を実行することを特徴とするプロンプト用文章生成方法。
【請求項2】
前記付加文章生成ステップは、前記入力された質問文をもとに、当該質問文に関連し
た関連文章を複数取得し、取得された複数の前記関連文章から、前記参考情報として適
した複数のキーワードを抽出し、前記複数のキーワードを使用して、前記合計文字数が
前記制限文字数を超えない前記付加文章を生成するステップであることを特徴とする
請求項1に記載のプロンプト用文章生成方法。

(特許庁「AI関連技術に関する事例の追加について」)

進歩性に関する事例(請求項1は進歩性なし、請求項2は進歩性あり)です。今回は進歩性の観点からではなく、請求項の記載という観点から、事例を拡張して説明したいと思います。
上記事例は、大規模言語モデルに入力する前までの前工程の「プロンプト用文章生成方法」に特徴があったので、この前工程の発明を請求項に記載しています。
しかしながら、情報システム全体としては、上図に示すように、この前工程を経て生成AIにプロンプトを入力し、生成AIから回答文を出力する工程までが必要となります。
仮に、発明を「回答作成方法」として上図に示す全工程を含めた場合には、例えば、以下のような請求項の記載となります。

【請求項1A】
入力された質問文に対して参考情報を付加することによりプロンプトを作成し、作成したプロンプトを大規模言語モデルに入力し、回答文を自動生成する回答作成方法であって、
前記大規模言語モデルは入力できるプロンプトの文字数の上限である制限文字数が設定されており、質問文を含むプロンプトを入力すると、前記質問文に関する回答文を出力する大規模言語モデルであり、
前記入力された質問文をもとに、当該質問文の文字数と合わせた合計文字数が前記制限文字数以下の文字数となるように、前記質問文に関連した付加文章を生成する付加文章生成ステップと、
前記入力された質問文に対し、前記付加文章生成ステップにより生成された前記付加文章を前記参考情報として追加することによって前記プロンプトを生成するプロンプト生成ステップと、
前記プロンプトを前記大規模言語モデルに入力することで、回答文を自動生成する回答文作成ステップと、
を備えることを特徴とする回答作成方法。

事例38は前工程に発明としての特徴があるので、敢えて上記のような請求項1Aを作成する必要はありませんが、情報システムの一部としてLLMを利用している場合であって情報システム全体をクレーム化する場合、どのような点に注意すればよいでしょうか?

上図は、生成AI(LLM)を活用する情報処理システムの概念的な機能図を示しています。
情報処理システムは、前工程処理部において生成AIに入力するためのプロンプトを生成する処理を実行し、生成AI部では生成されたプロンプトを入力することにより、プロンプトに対する回答を出力し、後工程処理部において出力された回答に何らかの処理を実行して、所望の結果を得る構成とします。請求項は、例えば、以下のように書けます。

【請求項1X】
生成AIに入力するためのプロンプトを生成する処理を実行する前工程処理部と、
生成されたプロンプトを大規模言語モデルに入力し、回答文を自動生成する生成AI処理部と、
出力された回答文に所定の処理を実行し、所定の結果を取得する後工程処理部と、
を備える情報処理システム。

この情報処理システムにおいて、生成AI部が自社のものであるならば、つまり、LLMを所有するのであれば何ら問題はないと思います。LLMを自社で備え、自社でファインチューニングする場合です。
しかしながら、一般にはクラウドサービスとしてLLM(ITベンダーのLLM)を利用することの方が多いと思います。この後者の場合には、生成AI部は請求項の構成要素に含めるべきではありません。以下のような記載とするべきです。

【請求項1Y】
生成AIに入力するためのプロンプトを生成する処理を実行する前工程処理部と、
生成されたプロンプトを大規模言語モデルに入力することにより、出力された回答に対して所定の処理を実行し、所定の結果を取得する後工程処理部と、
を備える情報処理システム。

このように、LLM特許の場合には、LLMが自社所有のものであるか否かに基づいて、最適な請求項の記載は異なってきます。
LLM特許の発明アイデアをお持ちの方、一度相談に訪れてください。最適なアドバイスをさせていただきます。

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